The Revolving Door
おとといの西日本、特に、四国や九州地方では雨が降り続き、上空の気流も悪い状態でした。梅雨前線が運んでくる湿った空気で、重たく濃い鉛色の雲がモコモコとしていました。CAは乗客に飲み物を配ることもできません。ずっと揺れている中を飛行するので危険です。いつ強めの Turbulence(乱気流)に入るかわかりません。
きっと皆さんも揺れてる飛行機に乗るなんて嫌ですよね。僕らだって嫌です。こんな日は揺れるところを、避けて避けて避けまくってるんです。コックピット内は大忙し。乗客のなかには酔う人も出てきます。当然です。
でもこんな中、スヤスヤ眠る人たちもいます。どんな人たちか想像つきますか?多くは出張で移動されるビジネスパーソンです。仕事だと、多くの方は朝早く起きて空港に向かっています。寝足りなかった分をどこかで補わないといけないでしょうし、飛行機を降りたらスッキリした頭ですぐに仕事にとりかからないといけないかもしれません。
飛行機が飛ぶ路線には、沖縄や北海道などに遊びに行く「リゾート路線」というものがあります。それに対して、観光ではなく仕事に行く「ビジネス路線」と呼ばれる区間も。全国にいくつかそのような路線がありますが、わかりやすいところで言うと、平日の東京・大阪間がそれです。多くの方が日帰りの出張で使われます。頻繁に利用されるので、時間の使い方も決まっているようです。そういう方たちにとって移動中は、睡眠を補う大事な時間でもあるのかもしれません。
飛行中にCAに客室の様子を聞くと、「ほとんどの方が寝ていらっしゃいます」と言われ、思わず苦笑してしまいます。こんなに揺れてるのによく眠れるなぁと。
きのうは西日本でのフライトを終えたあと、われわれは東北の方へと目的地を変えていきました。日本海が目の前に見えてくると、少し前まで暴れまくっていた気流も段々とおとなしくなってきます。日本海上空までさしかかるとすっかりおとなしくなっていました。安心して飲み物も飲める、穏やかな気流に。梅雨前線が寝そべっているのは太平洋の上なので、そこから離れれば離れるほど、気流は良くなっていくものです。雲の形も色もさっきとは大違いで、真っ白でフワフワしています。太平洋ではとげとげしい顔をしていたのに、日本海に近づくとすっかり丸くなって、優しい表情に。眼下にある白い雲を見ると、黒のマジックペンで Smiley Face(ニコニコマーク)を描きたくなるほどで、こちらの気持ちも和らいでいるのに気づきます。
そして地上では、ほとんど風が吹いていない穏やかな状態であることが、上から見ていてすぐわかりました。例えば、暴風雨のときにあなたが家の中から外を見ているとしましょう。木々が暴れている様子が見えたら、すごい風だなと思うはずです。それと同じで、上空から下の景色を見るだけでいろいろなことがわかるものです。
日本海まで出て気づいたのですが、海の上が Ice Rink(スケートリンク)のように見えたんです。低いところに白い雲のかたまりが2つ佇んでいて、海面に波がほとんどなくツルツルに見えるので、鏡のように反射した2つを合わせると、雲が4つ浮かんでいるように見えるのです。冬の海は北風が強く、白波があちこちに立つので、空の様子をきれいに映すことはありません。でもこの季節、風がない日の海は波がなく、まるで磨かれたようにツルツルなのです。
おとといはジメジメした梅雨空から、涼しげな Ice Rink へ移動できました。でもきのうは残念ながらまた梅雨空へ戻らないといけませんでした。少しだけ避暑地で休息をとってきた感じです。この時期に北海道や東北地方にいると得した気分になります。北海道路線を飛んでいた同僚によると、どんよりした雲が多い日だったそうですが、湿気が少なく過ごしやすい日だったようです。
僕らは一日の中でいろんな天気に接しています。着陸してドアを開ける度に違う季節があらわれるのです。まるで Revolving Door(回転扉)のように。
幻冬舎の「ゴールドライフオンライン」にて連載続いてます。
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