Artemis II ー ③Crew
先月4月16日に配信した『Artemis II ー ①Godspeed』の中で、ミッションコントロールから発射前のクルーへ向けての最後の言葉を紹介しました。実際に映像もしくは音声を聞いたことがある方ならわかると思いますが、この “Godspeed” と言ったのは女性でした。NASA の Launch Director(打ち上げ責任者)としては女性初の Charlie Blackwell-Thompson という方。
今回のArtemis II の4人の宇宙飛行士たちのうち一人も女性でした。女性として初めて月周回ミッションに参加したことになった Christina Koch です。この女性宇宙飛行士のバックアップとして待機していたのは、やはり女性の Jenni Gibbons というカナダ人。結果的に 月には行かなかったものの、地球で唯一クルーとの交信を許された CAPCOM という、コミュニケーションの担当役を任されていました。この他にも、Geological Science(地質科学)の博士号を持った Kelsey Young という女性も参加しており、クルーに月の表面の写真撮影の指導をしていました。“岩“ については右に出る人がいないそうです。この他にも彼女たちほどスポットライトは当たっていないものの、様々な部門で多くの女性たちがこのミッションを陰で支えていました。いかに北米では女性が第一線で活躍しているかがわかると思います。
人類はこれまで9回月に行っていますが(うち月面着陸は6回)、クルーはすべて白人のアメリカ人男性のみで構成されていました。今回の Artemis II のクルー4人のうち一人はカナダ人。残りの3人のうちの一人は、前回『Artemis II ー ②A Spaceship Earth』の中でとりあげた Victor Glover という黒人初の月ミッションのパイロット。時代の変化は明白だと思います。
クルーの選抜というのは毎回とても重要です。いくら優秀でも、閉ざされた狭い空間でトラブルを起こすような人をメンバーに加えることはできません。逃げ場所もありませんし、何よりも、緊急事態になった際にいかに他のクルーと協力しあって障壁を乗り越えていけるかが最も重要な点になってくるからです。
4人の宇宙飛行士たちが10日間過ごした宇宙船 Orion の大きさは、NASAの発表によるとミニバン2台分。でも、日本とアメリカではミニバンの大きさは違います。我々が頭に浮かべやすい表現で言い直すと、この空間はだいたい5.6畳くらいになるようです。想像してみてください。決して外に出ることができないこの狭さの部屋に、他人と10日間寝食を共にすることを。トイレもこの中にあるのです。しかも、この宇宙船は丸みのある形をしているので、角がないぶんもっと狭く感じると思われます。
地球へ戻った後、インタビューやトークショーに 引っ張りだこの この4人。終始とても仲の良い雰囲気に包まれ、絆の強さが伺えます。大きなミッションをやってのけたという達成感もあるのでしょうが、全員の年齢の近さもあり、学校で仲の良いクラスメイトに見えてきます。この結束の強さはNASAの歴史に残るほどではないかとさえ思えてきます。ひょっとしたら今後、良いお手本としてチーム作りの授業の中で題材として使われることがあるかもしれません。
これは地球に戻ってきてから行われた、ヒューストン宇宙センターでの会見での Christina Koch の言葉です。
Crew(クルー)と Team(チーム)の違いについての説明ですが、この月へのミッションに行って、考えが変わったそうです。
A crew is people or a group that is in it, all the time no matter what, that is stroking together every minute with the same purpose, that is willing to sacrifice silently for each other, that gives grace, that holds accountable.
クルーとは、ただ “同じ場所にいる人たち” のことではない。どんな状況でも、同じ目的に向かって歩み続ける仲間のこと。互いのために静かに犠牲を払い、思いやりを持ち、必要なときにはきちんと向き合うことができる存在。
A crew has the same cares and same needs. And a crew is inescapably, beautifully, dutifully linked.
クルーは、同じ思いを抱き、同じものを必要とする人たち。そしてそのつながりは、逃れることのできないものでもあり、同時に美しく、責任を分かち合う形で深く結ばれている。
これが、今の彼女が考える Crew の定義です。
そして次のように言葉を締めくくったあと、会場は大拍手に包まれました。
I know I haven't learned everything that this journey has yet to teach me.
But there's one new thing I know, and that is planet Earth: You are a crew.
この旅がまだ私に教えようとしていることを、すべて学び終えたわけではない。でも、新しく気づいたことがひとつある。それは、地球という惑星に生きる私たちは、“ひとつのクルー”だということだ。
彼女らこそ最強のクルーだと思っていたら、宇宙に行ったこともない我々こそが地球という星のクルーだと言うのです。いま争ってる場合ではありません。人類はもっと責任感を持って、思いやりを持ちながらお互い助け合って生きていかなければなりません。
つづく
すでに登録済みの方は こちら

