Hanabi Beneath the Thunder
いやぁ、数日前の北海道は半袖では寒かったですよ。もう少しすると朝は暖房の季節が道内では見えてきたようです。まだまだ汗をかく本州や西日本にいるとわからないものです。
前線が日本列島を横たわっていたので、東北地方の大気はとても不安定でした。雷がピカピカ光っている夜、あちこちにそびえ立ってる雨雲を避けて飛んでいました。黒や灰色の、いかにも悪役という顔をした雲たちが月明りに照らされているので、余計に不気味に見えます。
上から下を眺めていると、雨が降っているところと、降っていないところがはっきりとわかります。ところどころで花火が打ちあがっているのが見えました。夏休みが終わる最後の週、お休み気分をまだまだ味わっていたいという感じ。忙しく仕事をしている自分たちに、当てつけのようにのどかな感じが下から伝わってきます。
およそ1時間の間で見えた花火は5か所。きっとわれわれの視界に入っていない場所でもやっていたはず。いったいどれくらいの数の花火大会が夏には催されるのだろうと思い調べてみると、なんと7月から8月にかけて1,000から1,200も開催されているようです。想像していた以上の数です。日本の夏は本当に花火に満ちていると実感します。
上空から見える花火はものすごく小さなもの。飛んでいる高度にもよりますが、視認できても米粒程度です。「あ、あそこなんかいま赤くなったね。花火やってるのかな」といった感じです。地上から見ていると、広い空に映し出されるカラフルな画面が「ボンボン」「パンパン」という音とともに次々と変わっていきますが、上空から見える花火というものはもちろん無音ですし、赤い小さな丸いネオンのようなものが一瞬見えるだけです。立体感もないですし、なによりも音が聞こえないというだけで、花火とはなんとも迫力に欠けるものです。
日本の花火は、お祭りの付属品というより、供養や鎮魂、厄除けといった祈りの文化から生まれたものと言われています。現代ではコンサートやイベントで打ちあがることもありますが、その根底には「祈り」の要素が残っています。一方、海外の花火は、祝祭やエンターテインメントが中心で、日本の花火とは成り立ちも意味合いも少し異なります。
アメリカの Disney World(フロリダ)で見た花火が印象に残っています。花火そのものの美しさではなく、その「見せ方」に感心しました。360°の視野を使って全方向から見せる花火です。広大な土地を持つアメリカならではの演出です。あれは凄いなと思いました。やっぱりエンターテインメントの力というのはアメリカが抜きんでていると感じた一コマでした。それでも僕は花火の技術は日本が世界一だと思っていますし、なによりも観客の目はとても肥えていると感じています。日本国内どこで見ようが、一様にハイレベルの花火を楽しむことができるのは、レベルの高い観客がいるからに違いありません。
日本で見る花火に慣れていると、海外での花火は物足りなさをどうしても感じてしまいます。日本の花火師の技術は世界一だと思っています。この自慢できる日本の技術を、ぜひ日本を訪れる外国人にも味わってほしいです。全国で催される大会のなかでも、秋田の大曲(おおまがり)で行われる花火競技大会は、一度は見た方が良いと耳にします。僕自身まだ行く機会はないのですが、ここは一般向けのショーではなく、プロの花火師が技術を競う日本最高峰の花火競技会です。つまり観客はその競技を観戦している立場なのだそうです。大曲は「花火師の甲子園」とも呼ばれ、ここを目指して花火師たちは日々技術の向上に励み、こうして日本の花火文化は、職人たちの手で受け継がれていくのだと感じます。
先日は大気が不安定で日本はあちこちで雷雲が発生していました。こういうものがあると一気に疲労度が上がります。暗い夜、とても背の高い雲(発達して巨大になった雷雲)の中や外でピカピカ光る雷。不安だったのか、驚いていたのかはわかりませんが、CAによると乗客はみなさん窓の外の光景に釘付けになっていたそうです。
こうした雲の側を通ると雷が飛んできます。飛行機に当たるとやっかいなことになるので、ある程度の間隔をあけて飛びます。よくある誤解なんですが、飛行機が雷に打たれると墜落すると思っている方が意外と多いようです。車と同じで、雷に当たったところで飛ぶこと自体には大きな影響はありません。例えば先端に雷が落ちたとしたら、後ろから抜けていきます。雷は通過していくものなのです。飛行機がそのような素材で作られているから。
しかし飛行機が被雷すると、必ず整備士の点検が入ります。雷が入った場所と抜けた場所を特定するためです。この2点を見つけることによって、雷の通った道がおおよそわかります。これにより、その周辺の配線や機器に影響がないかを調べることができるのです。無線や航法機器がやられるのはやっかいですが、羽がついてる限り飛行機は問題なく飛び続けます。
それにしても雷は、とてつもないパワーを持っています。こんな夜は雲の中で猛烈な閃光が走ったり、長い稲妻が空を割くように現れたり、自然の圧倒的な力を見せつけられます。人間には到底つくり出せない規模の現象だということを、あらためて思い知らされます。無料の自然のエネルギーなのに、活かせないのが本当にもったいないなと感じます。このエネルギーをどうにか蓄えることができればと思うのですが、今の技術ではまだ叶いません。大きな雷が生む電力は、原子力発電所 10基分に相当する瞬間出力だといいます。継続的な電力ではなく、ピカッと光った瞬間のピーク値ですが、それでも雷がどれほど途方もないエネルギーを秘めているかがわかります。
花火と雷を繰り返し見て、その規模の圧倒的違いに、人間の小ささを改めて見せつけられました。自然を前にすると人間とは本当に無力な生き物です。人が作る光と、自然が生む光。その両方を同じ夜に見られるのは、空を飛ぶ仕事の特権なのかもしれません。
すでに登録済みの方は こちら