Golden

Happy Thursday! 先週のニュースレターにどうしても収まりきらなかった、続きのお話があるんです。
寺ピー 2026.07.16
誰でも

今年2026年の2月に、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックが開催されました。その後、4月にアメリカの男女フィギュアスケートのメダリストが集まり、エキシビション・ツアー “Stars on Ice US” がアメリカ国内で開催されました。

なかでも女子スター選手 Alysa Liu、Amber Glenn、Isabeau Levito の3人はアイドル並みの人気があります。プライベートでも仲良しという彼女たちは、ツアー中 “Blade Angels” という名前のユニットで演技をし、その動画は世界中に拡散されました。この演技に使われた曲は、“Golden” だったのです。先週のニュースレター “Rejection is Redirection” でお話した、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞をとった、あのK-POPの歌です。

Quad God and the Blade Angels: is the new USA Dream Team a group of figure skaters?, AOL.com

Quad God and the Blade Angels: is the new USA Dream Team a group of figure skaters?, AOL.com

ラスカルヘアーで有名な Alysa Liu(左)は、日本の中井亜美選手が銅メダルを獲得した際に彼女と一緒にジャンプして大喜びしてくれた選手です。記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。坂本花織選手のジャンプをべた褒めし、尊敬していると公言している彼女は中国人の父を持ちます。

Isabeau Levito(右)の母親はアメリカへ移民してきたイタリア人で、家庭内ではイタリア語を話すそうです。オリンピックが行われたミラノでは、ホームのような感覚と話していました。Amber Glenn(中央)は坂本花織と長年のライバルであり、深い友情を育んできた選手。LGBTQ+のアイコンとして支持されています。

これがアメリカなんです。様々なルーツを持つ人たちが集まり、共に暮らしている国なのです。そのうえで、この3人がK-POPで演技をする。その光景こそ、今のアメリカに必要なものだと感じました。移民としてやってきた人々が築き、そこで育った人々が多様な文化を理解し、尊重し、歴史の中で国境を越えて対話を重ねてきた国。かつて世界のお手本と呼ばれたアメリカの姿が、そこにはありました。

残念ながら、いまのアメリカ政治は世界をざわつかせています。

“Just because I’m wearing the flag doesn’t mean I represent everything that’s going on in the US.”
「アメリカ代表だからと言って、アメリカで起きてるすべてのことを肯定して代表しているわけではない」

"Flag", Breakfast@Bird's Eye View, 2026.02.19

そんな空気の中、こう語った選手もいます。その言葉には、国を背負う人の静かな葛藤が滲んでいました。

この時期にK-POPの曲がアメリカで2つの大きな賞を獲得したことは、非常に意味があることだと思います。そして、オリンピックでメダルをとったフィギュアスケーターたちに選ばれ、リンクの上で響いた。その時の音楽は、国歌に近い役割を担っていたような気がします。

アメリカのルーツはやっぱりこれなんだ。多様性を重んじる国なんだ。国の代表であるオリンピックのスターたちがK-POPでそう示すことで、どこか安心を与えてくれるものでした。 “Gloden” は、そんな意味を背負った曲になったのだと思います。心からおめでとう、と言いたくなりました。

ところで、どうして僕はこんなにアメリカのフィギュアスケートに詳しいのか。そう思う方もいるかもしれません。僕はオリンピックが全盛期だった時代をアメリカで過ごしました。まだSNSもなく、テレビの前に座って選手を応援するのが当たり前だった頃です。フィギュアスケートに限らず、体操やバスケットボールなど、人気のある競技には必ず質の高い密着番組やドキュメンタリーがありました。その世界にどっぷり浸かりながら、僕は自然と彼らを応援するようになったのです。その名残なのか、いまでもアメリカの選手の動向が気になって仕方がありません。

僕はさまざまな理由があっていま日本に住んでいますが、よく “心“ はまだ帰国していないと友達から言われます。多様性を認めることを正しいとする、そういう世界に僕の心は住みついてしまっているのです。いまの自分の父親としての役割は、その心をあと2つ作ることです。二人の娘たちは今夜も風呂場で “Golden” を熱唱しています。

We’re goin’ up, up, up
It’s our moment
You know together we’re glowing
Gonna be, gonna be golden

"Golden", KPop Demon Hunters

これは仲間と一緒に未来へ向かって上昇していく、ポジティブな歌詞です。

***

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