Storyteller

Happy Thursday! 制服の奥に潜む感情と物語。旅に出るとあなたもStoryteller。
寺ピー 2025.07.17
誰でも

ある国内空港のスターバックスでコーヒーの注文をした時「○○社のクルーですか?」と聞かれました。制服と顔写真の入ったIDを身につけて注文すると逃げも隠れもできません。「○○社のファンでこの前乗りました」と笑顔で接されると嬉しいものです。ただ、クルーの人数まで把握していたり「今からだと○○行きですか?」などと具体的な話が続くと段々こちらも身構えてきます。おべんちゃらを言ってくれているのではなく、本物のファンのようです。企業イメージが損なわれないように言動を慎まないと。「パイロット訓練生としてこの前採用が決まったばかりの者もいま裏にいます」とまで言われ、ますます余計なことは言えないなという雰囲気になっていきました(余計なことが何かはわかりませんが)。

制服を着用している間は特に気を遣います。周りの人に一挙一動を見られているわけですから。空港とホテル間の移動で使うタクシーやバンの中の会話も運転手には聞かれていることでしょう。自分たちの何気ない会話がエアラインを代表する声と取られがちです。ホテルのエレベーターの中で一般の宿泊客と一緒になると上から下までジロジロ見られ、エレベーターにいる時間が妙に長く感じられるものです。制服を脱いだ後は、衣服そのものよりも他の視線からの解放感にほっとします。

この制服、敵にも味方にもなります。悪天候や機材の不具合で欠航になったりすると、我々が飛行機から出て行く際には搭乗する予定だった旅客から厳しい視線を浴びせられます。逆に他社のクルーからの差し入れにほっこりした気持ちになることも。欧州のエアラインのクルーが乗ってきた際には会社のロゴ入りチョコレートをたくさんいただいたことがあります。CAから「クルーの皆さんで分けて下さいって言われました!」なんて弾んだ声で連絡がありました。

機内で子供に配るおもちゃやトランプなどのグッズは常に客席に用意があります。大人がもらっても嬉しいものですよね。時期によって内容は変わりますが、Freebie(フリービー)と呼ばれるもの。エアラインに限らず、レストランで子供に配られるおもちゃや企業のロゴ入りの景品、無料で配っている試供品などをさします。パイロットやCAはステッカーを持ち歩いていることはご存知でしょうか。つい数日前もターミナルでお客さんに声をかけられました。「飛行機が好きなんですが、ステッカーをもらえませんか?」と。ターミナルでクルーとすれ違うことがあれば声をかけてみて下さい。ごく稀に持ち合わせがない時もありますが、かなり高い確率でもらえるはずですよ。

僕たちは毎日のように飛行機に乗っているので特別感はありませんが、多くの方にとってはその日が特別な日かもしれません。年に一度の家族旅行の日かもしれませんし、はたまた一生に一度の思い出作りの旅行の日かもしれません。ぜひ良い思い出を空港から作ってほしいと常日頃思っています。あのスターバックスの店員だって飛行機が好きでわざわざ空港の店舗を選んで働いているに違いありませんし、クルーと話ができた日はその人の特別な日として記憶に残されていくことでしょう。先週はエレベーターで一緒になった小学生の男の子に「雨が降ってきたから雷に気をつけてね」と忠告され、「ありがとう、気をつけます!」と言って別れました。毎日空港のターミナルや機内でいろんな物語が誕生しています。

"Traveling leaves you speechless, then turns you into a storyteller." 
Ibn Battuta
「旅は言葉を奪い、そして気づけば自分が物語を語るストーリーテラーになっている」
モロッコ出身の大旅行家

飛行機の中でFreebieをもらった。空港でパイロット・CAからステッカーをもらった。他のクルーから差し入れをもらった。旅をする度に物語が増えます。すべて旅に出なかったら起こらなかった話。聞かなかった話。知らなかった話。今年の夏は皆さんもStorytellerになる予定はありますか?面白い物語ができたらぜひシェアしてください。

無料で「読むだけで英語力が上がる1-2-3 Letter」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら