Contrail

Happy Thursday! 暑い夏、弱い風、白い線。
寺ピー 2025.07.03
誰でも

あっという間に梅雨が終わり夏になってしまいました。仕事柄ほぼ毎日いろんな種類の天気図を見ていますが、それらを見てもやはり夏の形相をしています。梅雨空の中を飛ぶのは辛いので嬉しい反面、もう暑い夏がやってきたかという嫌な気持ちも。皆さんも通勤や通学だけで汗だくですよね。外を歩き回るお仕事も大変。外でずっと立っていないといけないお仕事も大変。

なぜ暑いか。気温が高いのはもちろんですが、それは風が弱いからです。天気図を見ても上から下までとても風が弱い。特に冬は上空に行けば行くほど風は強くなるものなんですが、この夏型の天気の配置になってしまうと全体的にどの高度も弱い風の状態が続くのです。もちろん夕立などによって強い風が生まれることもありますがそれは一時的なもの。夏の大きな高気圧が日本の上に居座ってしまうと、風は終日おとなしくしているものなのです。

風は体感温度に大きな影響をもたらします。西日本や東日本に住んでいる方にとっては、冬の北海道や東北はとても寒いというイメージがあると思いますが、肌で感じる寒さというのは風速によって全く異なります。0℃という気温を見るだけで寒いイメージが浮かぶでしょうが、日光が当たっていて風がなければそんなに寒いと感じないものです。逆に5℃くらいあっても強い風が吹いてると耳がちぎれるくらいの寒さを感じるもの。それほど風というのは日常生活に大きな影響を与えるものなのです。

この時期の風の弱さは空から見ていてもよくわかります。全国各地の湖や池が「」と化するんです。水辺に生えている木々や周囲の建物の姿が水の表面に綺麗に映し出されています。Glassy Waterと呼ばれるもの。Glassyは、鏡面、とでも訳すのでしょうか。まるでコップのガラス(Glass)の表面のように映る水ということです。いつでも映ってるのでは?と思うかもしれませんが、実は違います。風が強いと水の表面に波が立つので、周りのものがギザギザに映ったり、ぐにゃぐにゃになったものが揺れているだけで何が反射しているのかもわからなかったりするもの。これが今の時期だと水面が動かず完全なる鏡状態になって、周囲にあるものが綺麗に映るのです。富士山が上下反転して綺麗に湖に映っている写真「逆さ富士」がありますよね。紙幣にも描かれていますが、あれは風のない日にしか撮れないものなのです。

さっきフライトを終えたんですが、今朝のcontrails(飛行機雲)も夏仕様になっていました。皆さんも目にすることがあるでしょうが、ご存知でした?飛行機の後ろに常に飛行機雲ができる訳ではないって。いろんな条件が重ならないと見えないものなんです。大きな要素としてまず冷たい空気が必要です。例えば冬空に強い寒気が入っている時はよく出ます。飛行機のエンジンから排気される熱い熱で周りの水蒸気が暖められて、これが氷の粒になって目に見えるようになるのです。今の時期はそれほどの冷たい空気がないので、飛行機雲は出ることはあってもすぐに消えてなくなってしまいます。白く長い線が空に引かれても、寿命が短くすぐに見えなくなるのです。梅雨が終わってカラッとしていて水蒸気があまりないのももう一つの大きな理由です。

今朝の夏空にcontrailを見つけたらきっとそれは綺麗な直線でしょう。冬のものは風に流されて曲線になってしまいがちです。まっすぐな白い線はすぐに消えてしまうでしょうが、日中に見える花火と思えば風情も出るかもしれません。

How many contrails can you spot from the ground this morning?  今朝はいくつ見えますか?

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