Artemis II ー ②A Spaceship Earth

Happy Thursday! 先週の配信はお昼近くになってしまいました。仕事とのタイミングがどうしても合わない日もありますが、そんな日もあるんだなと受け止めてもらえたら嬉しいです。今朝もメールを開いてくださり、ありがとうございます。「毎週通勤電車の中で読んでいます」というお声もいただき嬉しいです。
寺ピー 2026.04.23
誰でも

先週お話した通り、アメリカでは宇宙へ向けたロケットはフロリダ州から打ち上げられます。スペースシャトルの時代もそうでしたし、ずっと昔のアポロ計画の時代から変わりません。日本では種子島に宇宙センターがあります。特別な理由がない限り、各国、最も赤道に近い場所に打ち上げ台を設置しています。

なぜかと言うと、赤道に近いほど、西から東に向かって回っている地球の自転速度を利用できて有利だから。最初からものすごい追い風があるようなものなんです。それも時速 1,000km 以上の。この燃料も使わない無料の追い風、使わない手はありません。

ロケットや今回の Artemis II で使用された宇宙船 Orion も、発射台からまっすぐに上昇していきますが、ずっと垂直に上がり続けるわけではありません。宇宙空間に近づくにつれ徐々に角度をつけて斜めにしていき、最終的に地球の地面に対して水平になっていきます。ずっとまっすぐだと、もろに重力と戦い続けないといけなく、とてつもないロケット燃料が必要になってくるからなんです。

ISS(International Space Station:国際宇宙ステーション)がだいたい地表から 400km のところにいるとしたら、それよりも高い高度にGPS衛星などが軌道に乗っています。気象衛星はその更に上の 36,000km にいるというイメージを持ってください。旅客機が飛んでいる高度は高く感じるかもしれませんが、しょせん10kmから15kmくらいのところなんです。今回の Orion はそのような高度をすべて突き抜けて月に向かっていきました。数字がバグってくるのではないでしょうか。

物理や数学に精通した科学者がありとあらゆる計算をして、月に向かうプロジェクトを計画して実行しましたが、これってすごくないですか?いいですか、月は動いているんですよ。地球の周りを公転しているのです。動いているターゲット(月)の先を目指し飛び立ち、その周りをぐるっと一周して帰ってくる。予定通りに。どんな風に計算したらそんなことが可能なんだろうと感心するばかりです。

大学で受けたNavigation(航法)の授業を思い出しました。元NAVY(米海軍)の先生でしたが、海軍の戦闘機が空母に着陸する際の話をしていた時です。説明のあとにさりげなくつけた一言に僕らは衝撃を受けました。『ちなみにこの空母は 20 kt (時速37km) で動いてるからね』と。要するに滑走路が動いていると言っているのです。そこに昼夜問わず着陸するのだと。そのときは、まだ小型機の着陸の仕方を学んでいる過程の生徒で教室はいっぱいでした。地上にある “動かない” 滑走路にさえうまく着陸できない段階です。教室が絶望のどよめきに包まれたのを覚えています。

Orion が地球へ戻る時ももちろん地球は止まることなく公転しているわけです。そのうえ、その地球は同時に自転もしているのです。どうやったら「何時何分にカリフォルニアの沿岸近くの太平洋上に着水する」なんて計算ができるんだろうと思うのです。誤差はわずか1マイル(1.6km)という精度だったそうです。前回お話しした宇宙工学の学生たちの姿が脳裏に浮かび、脱帽です。

今回この Orion 宇宙船を操縦したのは、Victor Glover。地球から160,000マイル(25万km)離れた場所での地球とのインタビューで、地球にいる人たちへ イースターサンデー(4月5日)のメッセージをと聞かれ、こう答えました。

You are on a spaceship called Earth that was created to give us a place to live in the universe, in the cosmos.
君たちは地球という宇宙船に乗っている。
この宇宙で、我々が生きられる場所としてつくられた場所に。

Maybe the distance we are from you makes you think what we are doing is special, but we are the same distance from you.
君たちから遠く離れているから、我々のしていることが特別に見えるかもしれないけれど、我々も君たちから同じだけ離れているんだ。

And I'm trying to tell you just trust me, you are special in all this emptiness, this is a whole bunch of nothing, this thing we call the universe.
だから伝えたい、信じてほしい。
この果てしない空虚の中で、君たちは特別な存在だ。
宇宙なんて、ほとんど何もない場所だ。

You have this oasis, beautiful place that we get to exist together
そんな中で君たちはオアシスを持っている。
僕たちが一緒に存在できる、美しい場所を。

Victor Glover, NASA Astronaut and Pilot

『(この質問に)何も準備してないんだけど』と、即興で話したこの言葉が世界を感動させました。

特別な人たちが選ばれて月へ送られたと思いがちですが、その彼ら曰く、実際には、地球にいる私たちこそが特別だと言うのです。こんな真っ暗な、ほとんど何も存在しない空虚の世界にいる人類こそがと。残念ながらこの「地球」という宇宙船の中では争いが絶えません。イランで戦争が起こっている最中、心に響くメッセージの一つでした。

アメリカのトランプ大統領から通信回線を通して生でお祝いの言葉をかけられた時、ほとんど何も話さなかった4人のクルーの映像が世界の多くの人にSNSでシェアされましたが、皆さんも観られたでしょうか。

昨年亡くなったイギリスの世界的な動物行動学者、Jane Goodall が、Netflixのドキュメンタリーの中で語った “Famous Last Words” 「最後の言葉」が世界で反響を呼びました。毎日ニュースで見聞きする世界の指導者5人を名指しにし、『全員宇宙に送って地球を見せたい』と語ったものです。宇宙から見ると、地球には国境が見えず、争いや政治的対立が無意味に見えると。

つづく

***

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