Artemis II ー ①Godspeed

Happy Thursday! NASAカラーのドーナツの写真をシェアします。カッコいいのに、可愛いくもあり、とても気に入りました。日本では食べれないのが残念です。
寺ピー 2026.04.16
誰でも

夜飛んでる時は、雲の上にいるとたくさんの星が見えます。それぞれの星は米粒より小さいサイズ。先週はいつもより意識して星を眺めていました。

今月4月1日から11日にかけて、アメリカ・NASAの月面探査 “Artemis II”(アルテミス計画)で打ち上げられた、有人宇宙船Orion“(オリオン)が宇宙にいたからです。毎日のように、宇宙飛行士と地球との会話がSNSに流れてきて、この10日間はとても刺激的でした。宇宙で過ごしてるクルーの会話の動画や、さまざまな瞬間の写真が頻繁に手元に届き、時代の流れとテクノロジーの発達を感じました。

彼らは最も遠い時で、地球から160,000マイル(25万キロ)離れた場所にまで行きました。ゼロが多すぎて実感が湧かない数字ですよね。とてつもなく遠い距離。地球の円周でさえ4万キロ。凄いなぁと思って星を見ていたのです。

4人の宇宙飛行士(うち一人はカナダ人)が、人類で初めて月の裏側を回って地球に戻ってくるミッション。アメリカやカナダでは大盛り上がり。こんなNASAカラーのドーナツまで発売され、熱狂具合が伝わると思います。僕も食べたかったなぁ。“DOUGHNUT”の “O” のところもちゃんと月の形になっています。

KripyKreme Doughnuts

KripyKreme Doughnuts

一方、日本での盛り上がりはそこまで大きくはありませんでした。日本人の宇宙飛行士が乗っていればもっと熱心に報道されるのでしょうが。打ち上げられた場所はフロリダ州にある KSC(Kennedy Space Center)。自分が大学生活を送った場所。ほぼ地元なので、僕が興奮するのは当然かもしれません。

驚かれるかもしれませんが、スペースシャトルが現役だった頃は、年3~5回ほど打ち上がっていました。すぐ隣には Cape Canaveral Space Force Station(ケープカナベラル宇宙軍基地)があるのですが、そこからも衛星を載せたロケットなどが年間20~30回ほど。毎月数回何かが宇宙に打ち上げられていました。

一度、空からロケットの打ち上げを見たことがあります。訓練飛行中に、管制官から「いま右見てごらん」と突然言われ、少し離れたところに目をやるとちょうどロケットが白い煙と共にグングン上っていくところ。「おー!ラッキー」。

僕が卒業した大学は KSC から車で1時間ほどの距離。スペースシャトルがよく打ち上げられていた時代です。帰還する際は大気圏に再突入する時に生まれる大きな Sonic Boom(衝撃波)が聞こえます。授業中に突然「ドン、ドン」という音が聞こえ、それと同時に教室の窓ガラスが震えるんです。「お、帰ってきたか」と教授と学生がつぶやき、また授業が進む。こういったことが日常的にある環境で学び、特に深く考えることはなかったのですが、いま考えると本当に贅沢な環境にいたものです。

宇宙工学専攻でNASAに就職していく学生が周囲にたくさんいたこともあり、学生新聞には航空業界から宇宙関連まで幅広い記事が載っていて、毎号楽しく読んでいました。容易に想像できると思いますが、彼らは数学や物理の能力が驚くほど秀でていました。「あいつらにはとてもかなわないな」と思って見ていましたが、向こうは向こうで「パイロットなんて無理」と思って見ているわけです。それぞれの得意な分野を研鑽し、専門職として生きる。その最たる例がNASAではないでしょうか。各部署が完璧な仕事を遂行して初めて完結するプロジェクトを、彼らは何度も成功させています。規模の大小はあれ、どこの企業も同じことが言えるはずですよね。

そんな環境で学んでいたからこそ、宇宙開発の裏側にある重さも身近に感じていました。だからこそ、事故が起きたあとに原因が究明され、非のある部署が特定されると、その集団はとてつもない罪悪感を背負うことになるのです。スペースシャトル・チャレンジャー号の打ち上げ失敗を、僕は小学生の頃にテレビで見ていました。それ以来、宇宙に向けて人が打ち上げられる瞬間には、どうしても不安がよぎります。

これは、Artemis II のクルーがフロリダから打ち上げられる際の交信内容。ミッションコントロールからクルーへ向けての最後の言葉です。

“On this historic mission, you take with you the heart of this Artemis team, the daring spirit of the American people and our partners across the globe, and the hopes and dreams of a new generation. Good luck. Godspeed, Artemis II.”

「この歴史的なミッションに臨むあなた達は、アルテミスチーム全員の想い、アメリカ国民と世界中のパートナーの挑戦するスピリット、そして新しい世代の希望と夢を背負って旅立つ。幸運を祈る。どうか無事で、アルテミスII」

日本では “Good Luck” は「頑張ってね」程度の、軽い感じで使われることが多いようです。しかし、これを言う時はかなり意味深です。更に “Godspeed” には Good Luck では足りない、もっと深い祈りが含まれています。「本当に無事に戻ってきますように」という意味合いがあり、戦場に向かう兵士に声をかけるような場面で使われるもの。相当危険なことに挑む時にかける言葉なんです。個人的に Godspeed を口にしたことはありません。そんな場面に遭遇しないからです。Good Luck も、なんでもない場面で冗談として使うことしかほぼありません。

宇宙飛行士たちは、出発前に「遺書」という言葉は使いませんが、もしもの時のために「最後のメッセージ」を家族に書いてあるそうです。今回の出発だけでなく、無事な帰還を見て、家族だけでなく世界中が胸をなでおろしたはず。それほどまでに危険を承知でのミッションへの参加、世界中からリスペクトが集まるのは当然のことだと思います。それだけに、彼らの宇宙からのメッセージも、地球へ戻ってからのインタビューの言葉も、とても重く深いものでした。

つづく

***

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