Flag

Happy Thursday! ミラノ・コルティナ 2026 冬季オリンピックでのアメリカ選手のインタビューが話題に。ちょっと長くなってしまいました、時間のある時に読んでください。これでも半分削ったんです。感情が溢れ、止まらなくなってしまいました。でもMaple🍁は可愛いですよ。
寺ピー 2026.02.19
誰でも

アメリカ人とカナダ人の区別って、皆さんにはできますか?正直、かなり難しいと思います。アメリカ人にとっても、カナダ人にとっても同じです。アメリカのトークショーやインタビューを観ていて「え?あの人ってカナダ人だったの?アメリカ人だと思ってた」なんて会話は本当によくあります。逆のパターンも同じです。

もちろん、単語の選び方やアクセントなど、細かいところを聞けば「あ、これはアメリカだ」「これはカナダっぽいね」とわかることもありますが、普通に接しているだけでは簡単に見分けられるものではありません。歌手の Celine Dion や Bryan Adams、俳優の Michael J. Fox なんて、アメリカ人だと思われているカナダ人のトップ3と言ってもいいのではないでしょうか。

つい先日、カナダ人の空港で撮った写真がSNSで話題になっていました。スーツケースからリュック、上着まで、あらゆるものにカナダの国旗のワッペンやステッカーが貼ってあるのです。

“We look like Americans, but we apologize more.”
「見た目はアメリカ人だけど、謝る回数は多いよ」

という冗談があるくらい、カナダ人は自国のイメージに敏感です。
可愛いですよね、あの赤いカエデの模様。Maple Leaf Flag と呼ばれています。昔からカナダ人はよく自国の国旗を身につけるイメージがありましたが、最近はその傾向がさらに強まっているように感じます。心底アメリカ人と間違われたくないのだと思います。

米国ミネソタ州のミネアポリスで1月、男女二人がICE(移民税関捜査局)の捜査官に銃で撃たれて死亡する事件が起き、現地を中心に全米へと抗議の輪が広がっています。政府が強引な移民摘発を繰り返し、それに反発する市民が大規模なデモを続けているのです。

こうした状況の中で、トランプ政権になってから「アメリカ人であることを恥ずかしく感じる」と言う国民が急増しています。同時に、「アメリカ人と一緒に見られたくない」と感じるカナダ人も増えているようです。無理もありません。僕ですら、日本人の僕ですら、アメリカの国旗がついた服や帽子を身につけることに、ためらいを感じるようになりました。

アメリカの航空大学を卒業し、アメリカで働き、日本の米軍基地でも就労経験のある僕は、アメリカの国旗が入ったものをたくさん持っています。大学の帽子やパーカーなどにも、自然と星条旗のデザインが入っているものです。

2012年のロンドンオリンピックの時に買ったこのパーカーは、僕の大のお気に入りです。

I’m Japanese, but my closet has dual citizenship.

I’m Japanese, but my closet has dual citizenship.

欧米には国旗をファッションとして使う文化があります。日本で日の丸をつけるのとはちょっと意味合いが違います。日本では、学校行事や国体、政治的な場面など、フォーマルな場面で日の丸を掲げることが多いですね。街宣車やデモで日の丸が使われてきた歴史があるからか、「日の丸=右翼」という連想が多くの人の心に残るかもしれません。日の丸というものに、イメージの上で政治色がつきやすいのが事実ではないでしょうか。だからこそ日本では、国旗をファッションにする文化が薄いのだと思います。

一方、アメリカの星条旗やイギリスのユニオンジャックは、ポップカルチャーとして浸透しています。国旗=デザインアイコンとして扱われる文化があるのです。アメリカでは星条旗は「国家の象徴」よりも「文化の象徴」として扱われているので、軽くファッションとして使われます。日の丸が「国家シンボル」として強く存在しているのとは理由が違うわけです。

それにしても、今まで何の躊躇もせず身につけてきた“Flag” 、つまり星条旗に、こんな気持ちを抱く日が来るとは思っていませんでした。今のアメリカ政権は、毎日のように自国民から揶揄されています。たった一人の存在によって国の空気がここまで変わってしまうなんて、とても悲しいことです。

現在行われているミラノ・コルティナ 2026 冬季オリンピックで、アメリカ代表のメンバーのインタビューが全世界の注目を浴びました。トランプ政権下で深まる社会の分断に心を痛めた米国選手たちの声です。

なかでも、スキーのフリースタイル代表の Hunter Hessハンター・ヘス)選手の言葉が一番印象に残りました。

It brings up mixed emotions to represent the US right now. There’s obviously a lot going on that I’m not the biggest fan of, and a lot of people aren’t. For me, I’m representing my friends and family back home, the people that I represent before me, all the things that I believe are good about the US. If it aligns with my moral values, I feel like I’m representing it. Just because I’m wearing the flag doesn’t mean I represent everything that’s going on in the US.

今のアメリカを代表することには、複雑な気持ちがある。あまり賛成できないことも多いし、そう感じている人もたくさんいる。自分にとって代表というのは、故郷にいる友人や家族、これまで自分を支えてくれた人たち、そしてアメリカの良い部分を背負うということ。もしそれが自分の道徳観と一致しているなら、自分はそれを代表していると思える。アメリカ代表だからと言って、アメリカで起きてるすべてのことを肯定して代表しているわけではない。

Hunter Hess, an American freestyle skier

みなさんに理解してもらえるかどうかはわかりませんが、僕にもアメリカを代表していると感じる瞬間があるのです。アメリカで名の知れた航空大学を出たことで、どうしても「アメリカから来た人間」として見られる場面があります。その大学というより、Made in USA の名を汚してはいけないという気持ちが、いつの間にか自分の中に根づいたのだと思います。アメリカ文化の中で学び、働き、育てられた者として、そこで得た良い部分を広げる役目を担っているようにも感じることもあります。だからこそ、バカにされるのは申し訳ないですし、その背景を誇りに思う瞬間もあります。

一方で、今は昔ほど堂々と星条旗を見せたくないと思う瞬間があるのも事実です。彼が言うように、すべてを肯定しているわけではないからです。自分が背負っているのは「アメリカそのもの」ではなく、そこで出会った人たちや、心に残った価値観、そして自分が大切だと思える部分だけです。その範囲でなら、今でも自分はアメリカを代表していると言えるのかもしれない。そんな風に感じる時があるのです。

アルペンスキー代表の Mikaela Shiffrinミカエラ・シフリン)選手は、Nelson Mandelaネルソン・マンデラ)の言葉を引用しました。「全部暗記してないから」と言いながら、自身のスマホからこれを読み上げていました。そのちょっとした仕草からも、彼女が自分を特別視せず、謙虚で、距離の近い存在であろうとしている姿勢が伝わってきます。こうやって優しく世界にメッセージを発信することもできるのです。

Peace is not merely the absence of conflict; peace is the creation of an environment where all can flourish, regardless of race, color, creed, religion, gender, class, caste, or any other social markers of difference.”

平和とは、ただ紛争がない状態のことではない。平和とは、人種・肌の色・信条・宗教・性別・階級・カースト、あらゆる社会的な違いに関係なく、私たち全員が繁栄できる環境をつくることだ」

Nelson Mandela(ネルソン・マンデラ)

戦争下ではないからと言って平和とは言えない。つまり今のアメリカは平和ではないと彼女は言っているのです。スポーツ選手が政治を語るべきではない、という声もあります。けれど、世界中のカメラが集まる場で、こうしたメッセージを発信できる人が他にどれほどいるでしょうか。残念ながら、今のアメリカの政治の中心には、その役割を果たせる人物が見当たりません。だからこそ、この選手たちの言葉を聞いて安心したアメリカ人は多かったはずです。
「まともな人がいる」「自分たちが日々感じている違和感は間違っていなかった」と、確かめることができたと思います。

一日も早く、堂々と Flag を身につけられる日が戻ってきてほしいものです。そしてカナダ人には、Maple Leaf Flag をわざわざ強調しなくてもよい日が来ることを願っています。

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