Through Coffee

Happy Thursday! 皆さんが飲む今朝のコーヒーの味を変えてみようと思います。
寺ピー 2025.07.24
誰でも

What if I told you there’s a film that makes your morning cup of coffee taste better—every single day?

もしあなたが飲む毎朝のコーヒーを美味しくする映画を観たと言ったら、信じられますか?

1. コーヒーは高い?

普段の行動範囲内にBlue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)のお店がなく、なかなか訪れる機会がなかったのですが、先日やっとタイミングも合い店内に入ることができました。あの青いボトルのロゴ、おしゃれですよね。通い慣れてるカフェとは全く違う雰囲気。店内はガランとしていて、かなり空間デザインに力が入っている感じです。最近ではトラックで移動式カフェなんてものも関東の方では出しているようです。

それにしてもどうしてこんなにコーヒーは高いのだろう。そう思っていた矢先にJames Freeman(Blue Bottleの創業者)が少し登場するドキュメンタリー映画をAmazon Primeで見つけました。 "A Film About Coffee" というもの。 彼の名前が目に入らなかったら、チープなドキュメンタリーと決めつけて観ていなかったと思います。

あちこちのチェーン店でコーヒーが値上がりを続けています。コンビニでは100円ちょっとで手に入るのに、ホテルや高級レストランでは1000円以上します。僕がよく泊まる外資系ホテルで朝食時についてくるコーヒー、自分好みの味でお気に入りなんです。ある日コーヒーだけ持ち帰ろうと思って値段を聞くと900円と聞きびっくりして断りました。なんと法外な値段なんだ。ところがコーヒー豆栽培にかかる時間と労力を考えると、これでもとてつもなく安いのだそうです。耳にしたことはあったものの詳しい背景を知っていたわけではありませんでした。

あの茶色いコーヒー豆、そもそもはCoffee Cherryというコーヒーの木から、赤いさくらんぼのような果実を摘み取り、それを乾燥させていくのですね。これを一つ一つ手で摘んでいく作業、気が遠くなります。ブラジル以外はまだ手作業なんだそうです。この一つの木から生まれるコーヒーは450gほど。カフェに並んでいるコーヒーの豆の袋はだいたい250g。いかに希少かがわかると思います。

2. コーヒーとの接点

バリスタの大会というものを見たことがありますか?今回この映画を観て初めて知ったんですが、審査員の前でプレゼンをしながらコーヒーを作るんですね。てっきり技術や味わいを競う大会で黙々と実演するものと思い込んでいました。何よりも各々のプレゼンの仕方がカッコ良く、またそこが見どころなんです。審査員一人一人の目を見ながら解説していくコミュニケーション能力も見られ、コーヒーへの情熱も評価されるんですね。

あるアメリカのバリスタチャンピオンが

"Coffee gets made three times." 「コーヒーは3回作られる」

と説明している場面がとても印象的でした。

  • 農園で果実が収穫されて精製され、乾燥して豆となる。

  • 焙煎。豆が緑から茶色に。コーヒー内部の風味と焙煎で生まれる風味を、焙煎職人が機械で調整する。

  • 最後にバリスタが飲み物になる。

各段階でそれぞれの主役、農夫・焙煎職人・バリスタが登場しますが、ふつう我々消費者が接するのは最後のバリスタのみ。そうそう、ついこの間ラスベガスで開催されたスターバックスのバリスタチャンピオンシップで、日本人バリスタが優勝して、もう一人の日本人も3位入賞しましたね。

映画にはこんな場面もありました。アメリカのバリスタがホンジュラスのコーヒー農園を訪れ、農夫全員にエスプレッソやカプチーノを振る舞うのです。コーヒーは飲んだことがあっても、圧力を変えたエスプレッソやカプチーノを飲むのは全員が初。皆一様に舌の上でじっくり味わっている表情がとても真剣。頷きながら、隣の人と目を合わせまたお互いに頷く。そのあとに笑みが溢れる。これはおいしいと。この人たちはコーヒーの果実と毎日接しているものの、我々と同じものを日常的に飲んでいるわけではないのです。「こういうものをカフェという場所で提供するために農夫の皆さんに日々果実を摘んでもらっているんです」と説明していました。ちょっと価値観が変わってきませんか?

こんなにもコミュニケーションを重視していることに少し驚きました。取引だけではない農園とバイヤーとの人間関係も大切なんですね。全ての仕事に通ずるものがあります。

3. コーヒーの誤解

この映画が進むにつれコーヒーへの大きな誤解があったことに気づかされます。僕を含め多くの人が、コーヒーは砂糖や小麦粉のようにいつでも台所にあるものと思っています。いつでも手に入る廉価なものだと。

"Coffee is something I drink every day but I never take it for granted. There is always this moment; I am grateful for it. And there is this moment that feels sacred. "
Eileen Rinaldi, CEO, Ritual Coffee Roasters
「コーヒーは毎日飲むものだけれど、これを当たり前のことだとは思っていません。いつも感謝の気持ちが湧いてくる瞬間があるし、神聖なひと時とさえ感じる瞬間があるんです」
Ritual Coffee Roasters(コーヒー焙煎業者・サンフランシスコ)

そもそも農夫に手作業で働いてもらってるなんていう意識は毛頭ありません。遠い所からはるばる届き食卓に朝並んでいますが、それは当たり前のことではないのです。冬の寒い朝起きるのが辛い時なんて、今からコーヒーが飲めると思ったら起きれる自分がいますが、これはとても贅沢なことなんですね。台所に届くまでの壮大なプロセスを知ると本当にありがたみを感じざるを得ません。

4. コーヒーが好きな理由

このRitual CoffeeのRinaldi氏が、自分の5歳になる子供に聞かれた質問に答える別のショート動画が少し前にSNSで流行っていました。「どうしてそんなにコーヒーが好きなの?」という質問にこのように答えたそうです。

I love that, through coffee, I get to be connected with other people all over the world who also love coffee. 「コーヒーを通して、自分と同じくらいコーヒーを愛する世界中の人々とつながれることが心から好き」
Eileen Rinaldi, CEO, Ritual Coffee Roasters 

これを観ただけでは月並みのコメント程度にしかとれないと思いますが、彼女が出ているこのドキュメンタリー映画を観るとうならされる言葉であることがわかります。

こういう描写がありました。

『コーヒーは数100年前にエチオピアからイエメンに渡り、インドネシアへ。その後ヨーロッパへ運ばれ、マルティニーク(ベネズエラの少し北にある小さな島)に渡った。それはたった1本の苗木で、その1本がなんと中南米で広がる""だった。こうして遠く離れた国の我々が、世界中の人々が毎朝コーヒーを飲んでいる。当たり前のように』

生産過程に関わる多くの人々や、それに費やされる時間だけでなく、これほどの時代と距離を越えてコーヒー栽培の物語は始まったのです。「コーヒーを愛する世界中の人々とつながる」意味がおわかりでしょうか。"It moves the continents."という表現がありますが、まさにその言葉通り「地球レベルの感動」ではないですか? どうでしょう、今朝のコーヒーは格別に美味しく感じませんか?

無料で「読むだけで英語力が上がる1-2-3 Letter」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら