When a Cap Touches Your Heart

Happy Thursday! お気に入りのものをなくしたとき、がっかりしますよね。これは、旅の途中に起きた小さな出来事でしたが、娘にとっては大きな出来事でした。
寺ピー 2026.10.01
誰でも

シンガポールのチャンギ空港に着いて歩いていると、娘(12)が騒ぎ始めました。「帽子がない」と。

市内から空港までは Grab(Uber のようなもの)で来ました。車に乗る前までは帽子を被っていた記憶はなんとなくあります。降りる際に忘れ物がないか確認したのですが、見える範囲には何も残っていませんでした。車中で娘は爆睡していたので、眠っている間にシートの隙間に落としてしまった可能性はあります。

その後どこへ向かったかわからない運転手に連絡がついたとしても、空港まですぐ戻ってこれるのか。そこまでの料金は払うのか。そもそも本当に車の中に忘れてきたのか。総合的に考えて、娘には諦めるよう諭しました。泣きじゃくっています。こんなに狼狽するとは。

いつまでたっても泣き止まない彼女に理由を聞きました。するとあの帽子にはたくさんの思い出がつまっていると言います。確かに長年、旅行の際には必ずと言っていいほどあの帽子を被ってきましたが、そこまで大事にしていたとは知りませんでした。

それはアメリカで手に入れた、大リーグのニューヨークヤンキースの帽子でした。独立記念日をモチーフにしたもので、後頭部に星がついていて、横には Nike のロゴ。子供用のものながら、なかなかカッコいい帽子でした。僕自身がヤンキースの大ファンなので、娘たちも幼い頃から意味も分からないまま「NY」のロゴ入りの帽子や衣服を身に着けてきました。

もう中一になった娘がこんなに焦って泣きじゃくるのは珍しいことです。親としても胸を痛める光景だったのですが、ここまであの帽子を大切にしてくれていたことがわかり、不思議と嬉しくもありました。

あとでネットで同じものが手に入らないか調べたものの、もう古いものなので見つかりません。仕方なく諦めるように言いましたが、いまだにこの話になるととても暗い表情を見せます。こういう時にはキッパリ諦めることも必要です。まだ先の長い人生の中のほんの一部の出来事ですが、のちに振り返って「すごいお気に入りの帽子があったんだよなぁ」と笑顔で思い出してくれることもあるでしょう。

失って初めて気づく大切なもの。
そういえば最近、英語で似たような文章に出会いました。
どこか情景が浮かぶ、静かな詩のような言葉です。

Airports have seen more sincere kisses than any wedding halls.
The walls of hospitals have heard more prayers than any sacred place.
It’s because love is felt most when it’s leaving.

空港では、どんな結婚式場よりも多くの本物のキスが交わされる。
病院の壁は、どんな聖なる場所よりも多くの祈りを聞いてきた。
愛は去っていく瞬間にこそ、いちばん強く感じられるから。

親としてもそうですが、娘自身もそれだけあの帽子を気に入っていたのだと再確認させられる出来事でした。突然の無常の別れはショックですが、迫りくる別れまでの限られた時間を、怯えながら過ごす日々もつらいですね。

でも、別れ際に、そのものや人の大事さに気づく時の温もりは嫌いではないです。ベイマックスの赤いハートが光る瞬間のような。

外から、自分の心の中に移動してくれただけなんですよね。
温かい、丸い優しさが、これからはずっと寄り添ってくれるみたいで。

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