More Than Coffee

Happy Thursday! 今日は少し趣向が違います。
寺ピー 2026.11.05
誰でも

英語でも飛行機でもなく、あるカフェを訪ねた時の話です。

「この店、入りにくいですよね?」
マスターのその一言に、僕は少し驚きました。どうしてもその感覚が理解できなかったからです。なぜそう感じなかったのか。コーヒーを飲みながら考えているうちに、これは文化の話だと気づいたのです。

このカフェは「入りにくい」のか。
少なくとも、僕にはそんな印象はありませんでした。

この関西国際空港の近くの町、大阪府泉大津にある MAHOT COFFEE は、まるでコンテナのような外観のお店。駅から近い神社の横の細い道を歩いていると、突然「お、なんだ?」と思わせるお洒落な建物が現れます。

このカフェはもともと、大阪国際空港(伊丹)を離発着する飛行機が頭上を通る、豊中市の曽根にあったお店です。友人の家がこのすぐ近くにあり、いつも親しみやすいマスターがいるお店があると耳にしていて、一緒に行く機会をうかがっていました。なかなか予定が合わない日々が続き、そうこうしているうちにお店が移転することに。ついに曽根に行けずじまい。やっと訪れることができたのは、この泉大津にできた新しいお店でした。コンテナのように見えるのですが、実はプレハブハウスなんです。

このお店の立ち上げ時、インスタでコンテナのような箱をトラックで運んでくる映像などを見ていたのですが、その制作途中の映像からも、なにか楽しそうな雰囲気が伝わってきていたんですよね。ようやく行ってきました、泉大津。初めて訪れる土地でしたが、こんなユニークな構えのカフェ、見過ごすわけがありません。隣にはキッチンカーも停まっています。店内に入らなくても外からコーヒーを購入できる小窓もあり。ここを目指していなくても、偶然こんなカフェを見つけたのならば、僕は興味津々で店内に入っていたはずです。

コンテナサイズのお店なので、中はそんなに広くありません。壁際に椅子が二つあるだけで、あとはコーヒーを淹れるスペース。外には座れるベンチや椅子があるものの、滞在型というよりも、持ち帰りがメインのカフェスタンド。そしてやっと、トレードマークの帽子をかぶったマスターにお会いすることができました。笑うとクシャクシャの素敵な笑顔。

中はまぁオシャレ。名刺もセンスのよいデザイン。(こっそりいただいた本名入りのもう一枚の名刺の方はもっと素敵)外観といい、内装といい、そのセンスが隅々まで行き届いています。なかでも目を引いたのが、このタンザニア生まれのポップアート、「ティンガティンガ」というもの。どこか楽しそうに見えるなと思ったのですが、動物からなにやら生命力を感じませんか。特にこのツヤのある、鮮やかな色が特徴的です。初めて知ったのですが、これ、ペンキなのだそう。もともと高価な画材が手に入らなかったからというのが理由らしいですが、いかにも現代アートらしい vivid な仕上がりになるのは、このペンキのせいなのかもしれません。

コーヒーをさっそく注文しようと思うと、テイスティングを勧められました。カウンターに四種類のコーヒーが並んでいます。素人の僕に違いがわかるのか不安でしたが、飲んでみると明らかにすべて味が違います。説明書きを読みながら「酸味があるとはこういうことか」、「フルーティーってこうか」とわかるものなんですね。シーズンや在庫状況によって豆の種類やテイスティングの数は変わるそうですが、自分の好みの味を選べるのは専門店ならではですよね。

僕はメニューにあるアフォガードを逃しませんでした。これが意外にも、甘いところが少ない。Sweet Tooth(甘党)の僕は拍子抜けしました。振りかけられたエスプレッソの粉の苦みが前に出ています。甘い箇所を探しながら食べるので、余計に甘いところが際立つというか。かなり大人の味で癖になりそうです。「僕の娘たちには苦すぎて無理かな」とつぶやくと、子供用にはエスプレッソを抜いてくれると。カスタムメードができるのが個人店の強みです。

それにしてもどんどんお客さんが入ってきます。自転車に乗った若いカップル。年配のお友達連れ。

「近所からいらしたんですか?」「たまたま通って、入ってみようと思われたんですか?」

マスターは必ずこうお客さんに話しかけていることに気づきました。黙々とコーヒーを作って渡しているだけではないのです。常連客のようなカップルとは、会話が弾んでなかなか話が終わりません。

マスターは、「この店、入りにくいですよね?」とおっしゃる。

そうかな?

喫茶店でもないし、カフェチェーンでもないこのスタンドは、食事を提供しているわけでもない。自分で焙煎をしているコーヒー専門店。コーヒーに深い知識がないと話ができない。そう構えてしまっている人が多いのでは、と心配をされているのです。

確かにワインの専門店に入る時は、ちょっと構えてしまいます。勉強していかないといけないような、ワインのうんちくでも知らないといけないような、そんな敷居の高さを感じます。でもこのカフェスタンドには、そんなものを感じません。

僕のバックグラウンドを友人から聞いていたマスターは、「欧米のカフェスタンドってこんな感じですよね?」と。「そうですね、まさにこんな感じです」

日本では、特に年配の方になると、喫茶店やカフェというのは、コーヒーを飲んで一息する、あるいは長々とおしゃべりをする所と捉えられているように感じる。持ち帰って、歩きながら飲むという考えがそもそもない。そういうお話をしながら、「なるほど、そういうことか」と思いました。僕にはもとからコーヒーを飲んでゆっくり滞在する気持ちがなかったのです。僕にとっては普通のカフェスタンドだったのです。「入りにくい」という感覚がなかったのは、これが理由だったのです。

そう、この店は、美味しいコーヒーだけでなく、カフェスタンドの文化そのものを日本に輸入しているのです。話をしながら、そんなことに初めて気がつきました。

コーヒーでこんなにコミュニケーションが生まれるんです。面白いものです。僕が以前投稿したコーヒー愛たっぷりの記事にも書きましたが、これはコーヒーにしかできない技だと思われませんか?服を買いに行ってこんなに話しをするでしょうか?スーパーなんて会話ゼロですべてが完了します。コーヒーならではの力なんです。だから、人がまた来たくなるスタンドになるのです。インスタには毎日のようにアップされるオシャレな写真や動画。僕だって、また行きたくなっています。このコーヒーと一緒に輸入してきた文化、ぜひ日本にも根付いてほしいではないですか。

提供してるのは、美味しいコーヒーだけではないのです。人の温もりと、何気ない会話から始まる人とのつながり。僕自身も友人とのつながりでこのお店に出会いました。

あなたもきっとコーヒーだけを買いにきたわけではないはず。
Stop for the coffee. Stay for the conversation.

寺ピー

文中に出てきたコーヒー愛の記事は、下から読めます。
コーヒー。こんな贅沢な飲み物はないんです。これについてはマスターと意気投合しました。 

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